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水仙/1

 ずっと、そう願っていた。

 1つになること。
 甘美で、背徳的で、倒錯的な果実。

 ――いま、それは彼の腕に抱かれていた。



 闇。

 我々は自らの外に感覚を待たぬが故、完全なる闇を観測する手段はない。
 無光、無音、無臭、無感覚、無重力。
 浮いているようで、落ち続けているのではないかと錯覚する空間は全て真っ暗。
 神経と筋肉。ただそれがあることだけ、内面から辛うじて知覚できる。
 だがそれは霞のように朧気で、五感は全て空虚に帰していた。

 ただ、唯一、胸の奥だけが確かな”もの”を感じていた。

 ――暖かい。

 優しい人の声、懐かしい音楽、柔らかな南風、午後の陽光のような。
 静かな、静かな、波紋のような波動。

 ――愛おしい。

 穏やかな波動は、やがて『カタチ』を持ち始める。 
 胸に顔を埋めるようにして、彼をそっと抱きしめる、小さな少女。
 花びらのように艶やかで、儚げな存在。

 淡雪のような白い肌から伝わる、薄く柔らかな肉の感触と熱を持った肢体の輪郭。
 そして心地よさ。肉体の感覚を媒介とせずに、ただ裡を充たしてゆく波動。
 
 少女がゆっくりと顔を上げ、こちらを見つめる。
 濃い琥珀色の瞳と、淡く艶やかな桜色の髪。

 彼は顔を上げた少女をただ見つめた。
 ここが何処であるかという疑問などはもはやどこかへ飛び去っていた。

 整いすぎた幼い顔立ちは、この世のものである気がせず、もはや凄艶を極めている。
 正しく夢中であった。
 伝わってくる少女の柔らかさと脆さをもっと感じようと、彼は彼女の背に両腕を回した。

 抱きしめ合う。少女は細く、小さく、柔らかく、脆い。

 つぷり、と音がして。
 坩堝へのみ込まれるように。


 世界が――昏倒した。

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Secre

No title

ここは…///

No title

正しく夢中であった
あたりがロリーヤマン節な気がしてならない

こめへん

>Anejiru Iku
///

>たくちゃん
俺の小説は渋いオッサンが朗読することを前提に作られています^^^

全自動水洗便所

そうかそうか、おっさんとょぅι゛ょを描けばいいのだな?w

相棒へ

幼女と冴えない学生でお願いしますwww
プロフィール

沙原 塞

Author:沙原 塞
 中1から萌えオタの社会人ゲーマー。ゲーム以外の趣味というと、自分の為に駄文を書き連ねるのが好きですが、ここはそういう散文の投棄場だとも言えます。
 さて、シスタープリンセスが連載されていたG'sマガジンを毎月楽しみにしていたあのころが懐かしい今日このごろ。みなさまいかがお過ごしでしょうか・・・

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