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水仙/4

 彼女が起きあがったとき、もはや身に纏うモノは行動をただ疎外するものでしかなくなっていた。
 制服のズボンは地面にずり落ちて拉(ひしゃ)げ、Yシャツはぶかぶかと不格好に膝まで届いている。
 性別が反転し、年齢にして5つは下がったその帰結としては当然である。

 彼女――タゼッタは得意げな面持ちで、まるで埃を取るように、服を脱ぎ捨てた。
 見事な肢体。染み一つ無い白銀の柔肌を惜しげもなく晒し、静かな夜の空気に浸らせる。

 ひょう、と冷えた風が大地に吹き付けた。
 夏の高き天蓋はとうに去り、季節は仲秋も半ばを過ぎている。
 しかしタゼッタはまるで気にした風もなく、視線を伏せぎみにして思案にふけっているようであった。

 ふと、タゼッタをある感覚が襲った。
 脳から脳へ、スパークするように弾けた情報の渦。
 反射的に彼女は公園の入り口――夜では到底見通せない所にある――を凝視した。

 確かにタゼッタは感知したのだ、ただ夜闇を通して、五感の届かぬ場所の気配を。

 そこからの行動は速かった。
 タゼッタは衣服と学生鞄を両手に抱えると、光の届かない公園の木立の影へと身を移した。
 そして暗闇の淵へしゃがんで身を隠す。

 誰かが、この公園に入った。

 しかし脳が知覚できる情報はそれだけではなかった。
 性別、背丈、体格、顔立ち、髪型、歩き方――外面的な全てが脳内の信号には記されていた。

 信号を紐解いていく。
 最初は1つ1つ、しかし徐々にその工程は驚くほど抽象化されてゆく。
 その人物の姿形を全て把握したとき、見えるはずのない真なる虚像を、タゼッタは脳裏へ瞬時に映せるようになっていた。

 声を出さぬよう気を付けながら、くつくつとタゼッタは笑っていた。
 それは自身の異(い)なる力の片鱗を目の当たりにしたからではなかった。
 そもそもこれは彼女にとって思い出すという作業に近いものであり、特別感動を呼び起こすものではない。

 全ての原因は、脳裏へと映された一人の少年にあった。
 彼は、タゼッタの裏であり表である佐上弘兼のよく知る人物――

「リョウ……稜……」

 長峰稜。佐上弘兼の最も親しいクラスメイト。
 その名を口にしながら、三日月の内弧のように淫靡な笑みを顔に浮かべる。

「私、お腹が空いちゃった」

comment

Secre

No title

私、お腹が空いちゃった まで読、おんだ。
18禁モノね、天使セリカのれびゅ~期待してます(^q^)

No title

>ろじゃ~さん
せりかは買わないけどねw
今月は金の消費が激しいから無理すぐる
プロフィール

沙原 塞

Author:沙原 塞
 中1から萌えオタの社会人ゲーマー。ゲーム以外の趣味というと、自分の為に駄文を書き連ねるのが好きですが、ここはそういう散文の投棄場だとも言えます。
 さて、シスタープリンセスが連載されていたG'sマガジンを毎月楽しみにしていたあのころが懐かしい今日このごろ。みなさまいかがお過ごしでしょうか・・・

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